コンサルタントの秘伝帖 「すぐできる、ずっと効く」 第5回
「会議の参加者をリスペクトせよ」
コンサルタントの秘伝帖
「すぐできる、ずっと効く」
 第5回
「会議の参加者をリスペクトせよ」


ケンブリッジの行動規範の一つに「Respect」があります。メンバーの個性や考え方を尊重し、チームとして相乗効果を出していこう、という内容です。会議も同じです。会議におけるリスペクトの対象はもちろん参加者です。つまり「会議の参加者の立場や考え方を尊重し、会議として最大の効果を出していこう」となります。今回は、会議の参加者をリスペクトするために、ファシリテーターがどう具体的に振舞えばよいか、をお伝えします。


ケンブリッジオフィス内のサイン
 

 
 
1. まずは受け止めて感謝する
 
誰かが発言すると、それに対して「でも・・・」と否定から入る人がいます。これはNGです。出鼻をくじかれた参加者がそれ以上発言しなくなってしまうと、活発な議論が生まれようがないからです。
「ん? どうかな?」とひっかかっても、まずはその発言を否定せずに、フラットな気持ちで、そのまま受け止めることが大事です。いわゆる「傾聴」です。具体的には、
  1. 発言に興味を示す
  2. うなずく
  3. 発言に感謝する
  4. 発言を復唱する
の順でアクションします。これにより、発言者に「発言してよかった」と感じてもらいましょう。
もちろん、大げさにやる必要はありません。発言中は相手の眼を見て、合間を見て軽くうなずき、発言後に「なるほど、ありがとうございます。今仰ったのは、XXということですね」と返す。復唱は多少言葉を変えたほうが効果的ですが(そのほうが「あなたの発言をちゃんと理解できてますよ」という意思表示になるので)、難しければまずはオウム返しから始めてみましょう。参加者がクールな発言をした時には「その視点はなかった」などきちんと称賛することも大切です。
 
 
2. 発言者の真意を確認する
 
もし参加者の発言にひっかかったら、受け止めた後、発言の真意を確認しましょう。人の思考は千差万別。なぜその発言に行き着いたのか、その真意を確認しないと、本当にその人が言いたいことは汲み取れない、と思ったほうがいいです。
発言の真意を確認する方法は、大きく3つあります。
  1. 「なぜそう思われますか?」
  2. 「もうちょっと具体的におっしゃっていただけますか?」
  3. 「他にはありませんか?」
発言者への丁寧な問いかけを通じて、あなたはもちろん、発言者自身の思考も深まっていきます。また、あなたがひっかかったならば、他にも同じように感じた参加者がいるはずです。その人たちの「?」も氷解し、会議全体の品質が高まっていきます。
それでも参加者の発言にひっかかった場合は、「もしかしたら、XXということも考えられますが、どう思われますか」などと別の視点を付与してみましょう。そこから新たな議論に発展するケースもあります。難しければ、次にお伝えする「水を向ける」方法もあります。
 
 
ケンブリッジ社員による会議風景。発言しやすい雰囲気が伝わるだろうか。
 
 
3. 水を向ける
 
どれだけ発言しやすい雰囲気を作っても、やはり自分から積極的に手を挙げて発言するのはなかなかハードルが高いものです。参加者をじっくり観察し、「何か言いたげだな」「ちょっと納得してなさそうだな」などと気づいたら「XXさん、どう思いますか?」と水を向けてみる(名指しして発言を引き出す)とよいでしょう。議論が途切れたからといって、参加者も見ずに「誰か、何か意見はありますか」と呼び掛けても、有効な発言を得られるとは限りません。議論の最中から、参加者の顔を見回し、誰が発言したがっているか、をチェックしておきましょう。
 
発言者が「発言してよかった」と感じることの積み重ねが、発言しやすい雰囲気を作り、議論の活性化へとつながります。発言者をリスペクトして、実りある会議をしましょう。