前回「発言者の真意を確認した後、他の参加者へ水を向けるとよい」とお伝えしたところ、何人かのメルマガ読者の方から「さっそくやってみたが、水を向けられた参加者から『いや、私に振られても』と言われ・・・」とご相談をいただきました。そこで今回は「水向け」のコツについてお伝えします。水向けがうまくいけば、会議の参加者同士が「考え」をぶつけ合います。それが納得感のある合意形成へとつながります。
1. 「考え」が表に出るまで掘り下げよ
よくニュース番組で、取材映像の後、キャスターがコメンテーターに意見を求めるシーンがあります。これも一種の水向けですが、コメンテーターは、取材の背景、主要なプレイヤー、世間の評価などのファクトをあらかじめ押さえています。したがって、水を向けられても、自らの意見を表明できるのです。相撲専門のコメンテーターにアフリカの貧困問題についていきなり水を向けても、迫力のあるコメントはもらえないと考えてよいでしょう。
会議も同じです。特に各部門から担当者が集まるような会議の場合、誰かが自部門に関する事実を共有したり、状況や調査結果の報告をしたりした後、いきなり他部門の参加者に「Bさん、今のAさんの報告についてどう思いますか?」と水を向けても「いや、私に振られても」となってしまう。水向けがうまくいかないのは、ほとんどこのパターンです。
水を向けるべきは、前回のメルマガで述べたように「発言者の真意」です。言い換えれば「発言の底に隠れた、発言者のパーソナルな考え」です。考えは、その人の経験や価値観、想い、現状認識などに立脚します。ここでファシリテーションが効きます。発言を掘り下げて発言者の「考え」を表に出し、他の参加者に水を向ければ、「その価値観に共感する」「想いは分かったが、違和感がある」といった「考え」を引き出すことができます。「水向け」の基本的なお作法は「考え」に「考え」をぶつけることなのです。
氷山に例えるとわかりやすいかもしれません。氷山のうち、水面下に隠れて見えない部分が、発言者のパーソナルな考えです。これを表出させて他の参加者にも見えるようにするのです。