期待値を一度確認するだけでは不十分です。なぜなら期待値はすぐに変わってしまうからです。
チームの状況は刻々と変わりますし、状況が変われば物事の重要性も変わります。それに応じてやるべきことの優先順位も変わりますから、周囲に期待することも変わってゆきます。だから期待値は、常に確認すべきです。
例えば、
「先日、1週間後にここまでやろう、という話でしたが」
「あ、それ、優先順位が変わったんで、そこまでやらなくていいよ。代わりに残った時間でこれをやってほしい」
といった具合に、当初より期待値が下がるケースがあります。
逆に
「これ、1週間後でいいんですよね」
「いや、急に必要になった。2日後までになんとかならないか」
「さすがに全部を2日でやるのは・・・。例えば、重要な部分だけはきっちり仕上げ、他はサマリーだけでどうでしょう」
「よし、それでいこう」
と、急に上がってしまった期待値を実行可能なレベルまで調整することもあります。
特にチームの状況がイマイチな時は、とにかく手を動かすことに必死になり、期待値の確認が疎かになりがちです。そしてチームの雰囲気が気まずくなりコミュニケーションが少なくなります。そうすると気持ち的に辛くなるので、状況が一段とイマイチになっていく、という悪循環になります。この悪循環を断ち切るには、無理にでも定期的にチーム内で期待値の確認をする機会を設ける必要があります。
「期待値変わってしまうあるある」でもうひとつ代表的なものに「役員報告」があげられます。
「では1年後に成果を報告します」「任せた。よろしく頼むよ」と約束した役員に、約束通り1年後に成果を報告すると「なんだ、そこまでしかできてないのか。遅すぎる」と叱責される。残念ながら、よく聞くエピソードです。
これは期待値の高止まりが原因です。当初「1年後に持ってきてくれればいいよ」程度の期待値だったはずが、役員は実務に直接関わるわけではないので、成果が出ない間はずっと待つことになります。そうするといつの間にか「時間をかけているんだから、さぞいい成果が出てくるに違いない」と期待値が上がっていきます。あるいは「さっさとやってしまえばいいのに、何にそんなに時間をかけているのだろう」という苛立ちから「さっさと成果を出せて当然」となってしまいます。
これを防ぐためには、
・ある程度頻繁に報告する。1年間のプロジェクトなら、1~2ヶ月に1回程度を目安にする。
・芳しくない情報を避けない。対策をセットで話す。
・役員層だけが解決できること(権限、人材、納期、部門調整)を中心に話す。
を粛々と実行するしかありません。これらにより、高止まりしそうになる期待値を調整することができます。経験的に「順調なら、そんなに頻繁に報告に来なくていいよ」と言われるくらいがちょうどよいでしょう。
期待を確認する。「常に」確認する。その中で求められている期待値を把握するだけでなく、期待値が高すぎたり不適切だったら調整する。これら一連の活動を指して、ケンブリッジでは「期待値マネジメント」と呼んでいます。