コンサルタントの秘伝帖 「すぐできる、ずっと効く」 第16回
「『頭が痛いのでなんとかしろ』とだけ言われても・・・」

 コンサルタントの秘伝帖 
「すぐできる、ずっと効く」 
第16回
 
「『頭が痛いのでなんとかしろ』 
とだけ言われても・・・」
 
 
「強いチームを維持し続けるためのコツ」シリーズ、第6回のテーマは「課題をきちんと書き切る」です。
 
以前、本メルマガで「課題の取扱い方法」について触れました。課題とは「なんらか解決すべき困りごと」であり、目を背けずに解決しなければ改革は失敗する、という内容でした。その後、あるお客様から「チーム内で課題リストを作ったが、解決以前に、そもそもうまく手を付けられない」と相談を受けました。実際に作成した課題リストを拝見したところ「この書き方では手を付けられないのも無理はない」と思いましたので「こういうフォーマットで書いてみてはいかがですか?」とお伝えし実践いただいたところ、数週間後に「課題の解決に向けてチームが動き出した」という嬉しいご連絡をいただきました。
 
課題の書き方ひとつでもチームの動きは変わるものです。そこで今回は「きちんと取扱える課題の書き方」についてです。
 

1.「なんとかしろ」だけではなんともならない

 
病院で医師に「頭が痛くて困ってるんです、なんとかしてください」とだけ告げても、医師は治療のしようがないですよね。いつ頭痛になったか、どれくらいどこが痛むのか、頭痛になる前に何をしていたか、原因は何が考えられるか、などの問診への回答と、様々な診察結果があって、初めて治療の方向性が定まるわけです。
 
会社の課題もこれと同じです。現場に「今困っていることはないか?」と尋ねると、よくある回答は以下のようなものではないでしょうか。
 
・システムの使い勝手が悪い(のでなんとかしてほしい)
・手作業が多くて業務が回らない(のでなんとかしてほしい)
・XXという機能が欲しい(のでなんとかしてほしい)
 
いずれも、困りごとに至る経緯や具体的な内容が不明確で、これでは解決の方向性を定めるのは困難です。従って、これらを課題リストに書いたところで「そう言われてもね・・・、で、どうしようか」になってしまうのです。冒頭で拝見した課題リストも、およそこのような書きっぷりでした。
 
では、具体的なアクションにつながるように課題を書き切るには、どうすればよいのでしょうか。
 

2.「何にどう」困ってるのか、を明らかにする
 
例えば「システムの使い勝手が悪い」という困りごとについても、
 
「使い勝手の悪さ」とは具体的に何なのか:
・ボタンの並び順がイケてない
・システム間の連携ができておらず、いちいちデータを落としたり上げたりしている
・今の業務に合っておらず、使える機能が限られている
 
その結果、どう困っているのか
・システム操作に慣れるまでに時間がかかる
・いちいち手作業が入り、業務時間を圧迫している
・手入力によるミスが頻発しており、顧客に迷惑をかけている
 
このように「困っている」にも様々なパターンがあります。
「システムの使い勝手が悪い」といっても「画面のデザインを変えるだけでよい」のか、「そもそも今の業務をきちんと棚卸しして、それに合ったシステムを構築しなおさなければならない」のか、まで突き詰めなければ、結局「困りごと」は解消されないのです。
 
3.「なぜそうなのか」を深掘りする
 
医師は、患者からいきなり「頭痛薬をください」と要求されても、そう簡単には薬を処方しませんよね。頭痛に至った経緯を紐解き、頭痛を引き起こした根っこの問題に手を打たなければ、ともすると患者を死なせることにもなりかねないからです。

例えば「XXという機能が欲しい」という「要求」に対し、なぜこの要求を出すに至ったか、その経緯を深掘りしないまま、単純にその機能を作って終わりにしてしまうと、後になって根本的な問題に手を打ててなかったことが判明したりします。

これは実際にあった例ですが、ある経理部員から「請求書の印刷時にプレビュー機能が欲しい」という要求がありました。プレビュー機能を作るだけなら大した工数ではない、と情報システム部がすぐにその機能の実装を進めようとしたところで、コンサルタントが「そもそも、なぜプレビュー機能が必要なのですか?」と質問しました。すると、その経理部員が「請求書の金額が間違っていることが多々あるため、今は印刷してから全件チェックしている。だから印刷前にプレビューできる機能が欲しい」と答えました。

このやりとりから「なるほど、プレビュー機能、必要ですね」としてはいけないことがお分かりでしょうか。それよりも先に、金額間違いを是正する仕組みを導入しなければ、会社として根本的な課題解決にはなりません。
 
 

このように、「何にどう」困っているのか、「なぜ」困っているのか、をきちんとセットでクリアにすることで、その課題に対する具体的なアクションを打つことができます。
 
Bad システムの使い勝手が悪い。
Good システムが今の業務に合っておらず、大量の手作業が発生しており、残業が増えている。
Next Action 手作業の内容を洗い出す、など、システムと業務のGapを調査しよう。
 
 
Bad 請求書のプレビュー機能が欲しい。
Good 請求書の金額間違いが多く、いちいち請求書を印刷してチェックしている。プレビュー機能が欲しい。
Next Action そもそも請求書の金額間違いを是正しよう。
 
 
まとめると、きちんと取扱える課題の書き方は以下のとおりです。【 】の部分が、きちんと埋めなければならない内容です。
 
【原因】により【現象】となっており、その結果、【実害】に困っている」