コンサルタントの秘伝帖 「業務変革の王道メソッド」 第10回
「表立った抵抗に対応する2つの方法」
コンサルタントの秘伝帖
「業務変革の王道メソッド」
 第10回
「表立った抵抗に対応する2つの方法」
 
ここまで数回にわたって、計画策定期における「隠れた抵抗」の見つけ方、ケアの仕方をお伝えしてきました。とはいえ、それでも抵抗が表に出るのをゼロにすることはできません。特に計画策定期の後半、課題の深掘り(第4回)のあたりに差し掛かると、調査で集めた事実と言語化された課題を目の当たりにした現場からは「問題だと感じていない」「個人批判では?」「課題かもしれないが何とかなってる」などの反応が返ってくることがあります。抵抗が表に出た瞬間です。これをスルーしてしまうと、その後、いくらクールな施策を打ち出しても(第5回)、今度は「改悪だ」「リスクが大きい」「やり切れる気がしない」などと反発を受けるのは必至です。現場の協力を失ったプロジェクトは推進困難となります。今回は、こうした「抵抗が表に出た瞬間」の対応方法をお伝えします。
 
 
1. 抵抗の真意を明らかにする
 
表立った抵抗をする人が現れたら、隠れた抵抗への対応同様、まず反論せずに共感しましょう。そして、その人が何を気にしているのか、何が気に入らないか、を洗いざらい吐き出してもらいましょう。その際、それらをすべて書き出すことをお勧めします。
 
抵抗する人は、整理のつかないまま、指摘や不満を感情的に口にしている場合があります。それらを丁寧に書き出し、同じことを違う観点で話していただけのもの、単なる質問、本当の指摘事項などに、その人と一緒に選り分けてゆきます。「3番と5番は同じことを言ってるようなのでまとめていいですか?」「そうすると一番気になっているのは6番ですか?」と対話をしているうちに、その人も徐々に冷静さを取り戻してゆきます。そうしたら、本当の指摘事項にフォーカスし「なぜそれが気になりますか?」と真意を確認しましょう。ここまで抵抗に向き合えば、ほとんどの人は真摯に説明してくれます。
 
 
2. 「納得いかない」を解消する

抵抗の真意の多くは、プロジェクトの何かに「納得いかない」ことに帰結します。納得のいかなさは、大別すると「アウトプットやロジックに納得いかない」ケースと「そもそもプロジェクトの進め方そのものに納得がいかない」ケースのいずれかに分類されます。ひとつずつ対応方法を見ていきましょう。
 
(1) アウトプットやロジックに納得いかない
 
これまでのメルマガでお伝えしたとおり、プロジェクトの立ち上げ期~計画策定期は「コンセプト作り」→「現状分析」→「課題深掘り」→「施策策定」の順に進みます。このあとは「施策効果測定」を実施しオーナーに施策実行のGoサインをもらいます。
抵抗している人は、これらのプロセスでまとめたアウトプット・結果、あるいはそれらを導き出したロジックや因果関係のどこかにひっかかっている可能性があります。それを、プロセスを遡って明らかにしていきます。
 
例えば、あるプロジェクトで「ペーパーレス化」という施策が打ち出されたとします。ある人が抵抗の弁を述べたため、真意を確認すると「ペーパーレス化だけが施策ではない。そもそもペーパーレスありきなのは納得できない」ということでした。おそらくこの人は、深掘った課題からペーパーレス施策へ行きついた検討ロジックに納得していないのです。であれば、課題一覧に立ち返り、改めて施策のアイデアを洗い出すところから仕切り直して、その人と一緒に、他にもっとクールな施策がないか、検討すればいいのです。
 
「ペーパーレス化しても現状はよくならない」という人には、現状分析の結果を共有し、ペーパーレス化しない場合の問題を定量的に伝えたり、他に何か見つけられていない現実がないか確認してもらったりすればよいでしょう。
このように、プロジェクトのプロセスを遡りひっかかっている部分を特定し、そこでの議論の結果やアウトプットを見せながら議論すれば、錯綜せずに合意形成することができます。
 
 
(2) プロジェクトの進め方そのものに納得がいかない
 
抵抗の真意を確認した結果「課題分析はなぜなぜ分析でやるべきだ」「人事部に話を聞かないなんてバカげてる」「なぜ全工場で現状調査をしないのか」など、プロジェクトのこれまでの成果ではなく進め方に納得いかないパターンがあります。
 
こういう抵抗に「いやこの進め方が正しいんです」と伝えても埒があきませんから、こちらの進め方の意図を説明したうえで、極力相手の真意を汲むのがよいでしょう。
とはいえ、明らかにプロジェクトの期限や要員を超過しかねない進め方を提示されるケースもあります。例えば「全工場で現状調査すべき」がコストオーバーであれば、期限と要員を伝えたうえで、どうすれば抜け漏れない現状調査ができるのか、一緒に考えてみてもらえばいいでしょう。「確かに厳しそう」と、もともと考えていた範囲に落ち着くケースもありますし、場合によっては「電話かWebアンケートで、この3つの質問だけでも聞いたがいい。なぜならば・・・」といった建設的なアドバイスをもらえることもあります。
 
 
いずれの対応方法も、「推進者vs抵抗者」の構図から脱却し、ともにプロジェクトの難題に立ち向かう協働の関係をいかに築けるか、がポイントとなります。抵抗が表に出た瞬間、こちらの主張を通すのではなく、まずは共感し、丁寧に抵抗と向き合ってください。