コンサルタントの秘伝帖 「すぐできる、ずっと効く」 第13回
「タイムアウト・ルールでチームの生産性を上げる」
コンサルタントの秘伝帖
「すぐできる、ずっと効く」
第13回
タイムアウト・ルールで
チームの生産性を上げる
 
 
「強いチームを維持し続けるためのコツ」シリーズ、第3回です。前回は、失敗がまだ小さいうちに張本人からイエローフラッグを挙げてもらうことの重要性についてお伝えしました。その中でイエローフラッグを挙げやすくするためのコツとして「20分ルール」に触れたところ、読者の方より「仕事の生産性を高められそうです。すぐにやってみます!」とコメントをいただきました。ありがとうございます。
 
そこで今回は、個人やチームの生産性を上げる「タイムアウト・ルール」の効果と宣言すべきシーンについて、改めてお伝えします。
 

1. タイムアウトは自ら取らなくてはならない

 
野球やバレーボールで、監督が「タイムアウト」を宣言するシーンをよく見ますが、仕事では、他人が自分のためにタイムアウトを宣言してくれることはまずありません。ですから「20分ルール」のように時間を区切り、自発的に、自らの置かれている環境をいったんリセットするしかありません。誰かに自分が抱えている問題を話すことで、頭の中が整理されて「あ、そうか」と自分で気づくこともあります。単にインターバル休憩をするだけでも、文字通り「頭を冷やす」ことができ、もう一度同じ問題に取り組んだらうまくいくこともあります。ケンブリッジの中には、デスクワークの際にはタイマーを脇に置いて作業をするコンサルタントもいます。
 
 
とはいえ、タイムアウトの概念を全く持っていない人に対して「タイムアウトを取ります!」といっても、なかなかうまくいかないかもしれません。また、立場によってはそんなことは言い出しにくいかもしれません。そういう時には、以前ご紹介した「グラウンド・ルール」をうまく使ってください。グラウンド・ルールを決める際に「タイムアウトを取って生産性を上げよう」と参加者の間で合意形成し、できるだけ具体的にルールを書きます。例えば「1時間ごとに5分タイムアウトを取ろう」「20分ルールを忘れずに!」などが有効です。
 
2. タイムアウト・ルールでチームの生産性も上がる
 
 
団体スポーツにおけるタイムアウトの効果としては、以下が上げられるようです。

・チームが作戦通りに動けていないので、作戦を再確認する
・チームへ作戦の変更を伝える
・調子が出ていない選手の状況を確認する
・選手を交代する

総じて「チームに何らかの介入が必要な時」、特に「悪い流れを断ち切りたい時」にタイムアウトを宣言しているのがお分かりでしょうか。

ビジネスのチームにおいても、同じような状況がよくあります。最もそうした状況が顕著に表れるのは会議のシーンでしょう。ケンブリッジでは、会議の場で、議論に介入したり、悪い流れを断ち切ったりしたい時に、タイムアウトを宣言することにしています。代表的な例をご紹介しましょう。

(1)議論が堂々巡りになっている

Aさんが意見を言い、それに対してBさんが違う意見を言う。一通り議論した後、またAさんが同じ意見を言う。それがひたすら繰り返される。こういう時「議論が堂々巡りになっていますね」と水を差します。それ以上の堂々巡りを防止するためには、Aさんの意見とBさんの意見を、ホワイトボードなど参加者が見えるところに書き「お二人の意見はこれで合ってますか?」と確認するのが効果的です。


(2)演説状態である

Aさんが長々と話してしまい、参加者が「で、この人、何が言いたいんだろう?」と戸惑い始めたら、「すみません」と介入し、「一言でまとめるとどんな感じでしょうか?」と丁寧に申し入れます。相手が目上の方でなかなか切り出しにくいケースが多ければ、グラウンド・ルールを設けましょう。例えば「話はXX分以内にまとめてしゃべろう」などが有効です。時間の長さは、経験上、業界や企業風土によって異なるように感じます。ちなみにニュースの世界には、視聴者は70秒しか集中してニュースを見られない、という考えから、ニュースキャスターが原稿を読み上げる時間を原則1分10秒に、長くても1分30秒に抑えているそうです。演説判定の目安として使えそうです。


(3)議論が脱線する

議論がヒートアップすると、徐々にその日のテーマから話が脱線していくことがあります。本当は業務上の課題について議論したいのに、会社の企業風土への不満の話になったり、チームの懇親会のお店を決めたいのに、いつの間にか近所のコンビニの品ぞろえの話になったり。しかし議論の時間は有限です。脱線してしまうと、本来決めたかったことが決まらなくなる場合もあります。そういう時は「今、私たちは〇〇について議論していますが、少々脱線していますね」と宣言します。脱線した内容も重要な場合は「その話、パーキング・ロットに入れておきます」と参加者に伝え、書き留めておきます。パーキング・ロットとは文字通り「駐車場」のことです。いったん脇に置いておくが、後ほど改めてディスカッションします、という意思表示をするのです。



タイムアウト・ルールはいわば「生産性を常に意識する目」である、とも言えます。タイムアウト・ルールを実践できれば、個人やチームの生産性を高く維持し続けることができるでしょう。