コンサルタントの秘伝帖 「すぐできる、ずっと効く」 第19回
「90時間使ってもやるべき『振り返りの場』」

 コンサルタントの秘伝帖 
「すぐできる、ずっと効く」 
第19回
 
「90時間使ってもやるべき『振り返りの場』
 
 
 
「強いチームを維持し続けるためのコツ」シリーズ第9回は「サンセット・ミーティング」です。
 
ケンブリッジでは、プロジェクトの節目や終了後に、うまくいったこと、そうでないこと、メンバーが抱えるモヤモヤした違和感などを振り返るために「サンセット・ミーティング(以下、サンセット)」を実施します。どんなに大きな規模のプロジェクトでも、関係者を集めて定期的にサンセットをやります。例えば30人の関係者が集まって3時間のサンセットをやると、トータル90時間もの時間を使うことになります。それでもやるべきサンセット。今回はその有効性についてお伝えします。
 

1. サンセットとは何か、なぜやるか

 
サンセットとは簡単に言えば「過去を振り返り、未来へ活かすための議論をする場」です。
「サンセット」という名称は「フェーズやプロジェクトの切りのいいところで、沈む夕日を眺めてビールでも飲みながら振り返りをしよう」というノリからついたのだとか。
 
チームで、ゴールへ向かって長期間、共に仕事をしていると、大なり小なり成功もあれば失敗もあります。仮にチームとしてゴールを達成できたとしても、中には「トータルではうまくいったが、あそこの進め方はイケてなかった」といったチームの課題から「Aさんとの仕事で、徐々にやりづらさを感じるようになった」といった個人の違和感まで、様々な「不協和音」があります。
 
こうした失敗や不協和音は「正直、もう忘れたい」「成功したんだから、細かいことはいいじゃん」と脇に置いておきがちです。しかし、これらを抱えたままでチームで仕事を続けていくのは、大きなリスクです。失敗の本質や不協和音の原因を取り除く努力をしなければ、チームの結束や信頼関係は崩れ「もうこのチームでは働きたくない」というメンバーがでて、やがてチームの崩壊や大きな失敗につながります。
だから今一度、チームのゴールを確認し、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのか、どういう不協和音があったのか、今後どうすればより成功できるのか、を関係者全員で振り返る必要があるのです。
 
こういったことをまとめて実施するのがサンセットです。
 
サンセットは、チームの仕事の節目(四半期に一度など)、プロジェクトならフェーズ単位などのタイミングで定期的に実施するのが、お勧めです。
 
 
 
2. サンセットの進め方
 
サンセットでは、お互いが率直に話し合う場作りがとても大切です。
ケンブリッジでは、サンセットの進め方が決まっています。
 
まず、各メンバーが以下の(1)~(3)を事前に準備して、サンセットの場で発表します。
 
(1)個人の良かった点、反省点
 
いわゆる自己評価です。
チームのゴールや個人の目標に照らし合わせて、良かったことも、ダメだったことも、素直に言うことが大切です。反省点ばかりだと気が滅入りますし、「たぶん誰も気づいてないけど、自分がやったあの仕事は、チームにとって大きな意味があった」と誇れることをきちんと表明し、周りから感謝される、というサイクルが生まれると、サンセットの場もチームの雰囲気もグッとよくなります。
 
メンバー個人の良かった点、反省点
 
 
(2)チーム全体の良かった点、改善点
 
チームに対する印象をざっくばらんに表明します。
自己評価同様、チームのゴールに照らし合わせて、チームとして良かったこと(初めてのチャレンジだったがうまくいった、以前はできなかったが今回はバッチリできた、など)、改善すべき点などを挙げます。
また「良い悪い」を明確にできなくても、気になっていることを表明するのも、サンセットとしては極めて重要なインプットです。「XXは確かにうまくいったんですが、果たして進め方はあれがベストだったんでしょうか?」など、チームの未来を考えるための取っ掛かりになりそうなことは、フとした思い付きでもいいので挙げましょう。
 
 
(3)各他のメンバーの良かった点、改善してほしい点
 
以前のメルマガでも述べたフィードバックです。サンセットでは、フィードバックを参加者間で相互に行います。
「関係を気にせずオープンに、かつ、贈り物のように」がフィードバックの鉄則です。日頃のフィードバックと異なり、サンセットのタイミングではある程度時間が経過しているので、相手がフィードバックの内容に実感を持てるように、具体的なエピソードやディテールを添えましょう。
参加者の人数が多い場合は、時間を短縮できるよう、あらかじめマトリクス形式でフィードバックを書きあうのもよいでしょう。
 
 
相互フィードバックシート
 
 
各メンバーが(1)~(3)を発表し終えたら、発表内容の中から、チームの結束を固めるために具体的にやること(アクション)を決めるための論点を選びます。全部議論しているとキリがないので、たいていは3つ程度、特にチームに影響を及ぼしそうな論点を選びます。
「初めてのチャレンジで、当初の見積もりから大幅に遅延してしまった。どうすればよかったのか?」「他チームとの連携がうまくいかなかった。連絡のタイミングと方法を変えるべきでは?」など、生々しい議論を通じて、チームとして押さえておくべき共通の型、明日から工夫することなどを決めていきます。
 
 
 
もう一度述べますが、サンセットは「過去を振り返り、未来へ活かすための議論をする場」です。チームのゴールを確認し、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのか、どういう不協和音があったのか、を関係者全員で振り返り、さらに議論を通じて明日からのチームとしての、また個人としてのアクションを明確にすることで、チームの結束や信頼関係がより強くなっていくのです。