失敗した変革プロジェクトの関係者が必ずと言っていいほど口にするのが「社内の抵抗にあいまして・・・」です。抵抗は「態勢の質」を著しく低下させます。「態勢の質」とは、言い換えれば、プロジェクトに関わる様々な関係者の熱量です。改善意識や危機意識を共有し、全員でプロジェクトのゴールを目指す状態を維持すれば、態勢の質は高まるのですが、抵抗はそこに冷や水をかけます。
抵抗にあい、態勢の質が低いままプロジェクトを進めても、関係者同士で熱のこもった議論はできません。そんな状態では、これまでメルマガで触れてきた、優れたコンセプトやロジカルな分析、クールな施策などを出せるわけがありません。プロジェクトは、常に態勢の質を高め続けなければならないのです。
そこで、今回から数回にわたりお届けするのは「抵抗との向き合い方」です。抵抗はつぶすのではなく、向き合うことが大切です。その理由とコツをお伝えしていきます。
1. そもそも「抵抗」とはなにか
もし、自分が今所有しているものに特に困っていない場合、いきなり「それを手放せ」と言われたら、恐らく「いやだな」「手放したくないな」と思うのではないでしょうか。「手放したほうが、良いことがたくさんありますよ」と言われても「はい、そうですか」とすんなり手放しがたい。これがいわゆる「抵抗」です。
行動経済学では、こういう心理傾向を「現状維持バイアス」と呼びます。未知のものや未体験のものを受け入れるくらいなら、現状のままでいい。他人から見れば「バイアス(偏見)がかかってる」のですが、当の本人は「新しいことにチャレンジして得られる利益より、被る可能性のある損失のほうが大きい」と感じているのです。
つまるところ、抵抗とは、人間誰しもが持つ心理作用であり、生理現象なのです。何かを変えたいときには必ず抵抗にあうのですから、感情的になったり、力づくで抵抗を排除しようとしたりしてもしょうがない、ということがお分かりいただけるでしょうか。